米国株 開示情報からテンバガー

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QIWI Q3 2021 Earnings Call

Event

2021年11月21日にQIWIのQ3決算発表とともにEarnings Callが行われた。会社の開示資料及びScriptからの状況まとめ

 

ロシア中央銀行による制裁期限は終了したもののFY21 4Qからは賭博産業規制の影響を受けることとなる

(ロシア中央銀行による制裁)

  • ロシア中央銀行によるルーティン監査に伴い、QIWIは2020年12月に$150,000の罰金を科し、かつ、外国送金の禁止又は制限及び企業からのプリペイドカードへの入金禁止措置を科した。また、この事実を開示しなかったことが、SEC規制に抵触したと主張するBronstein, Gewirtz & Grossman, LLC はClass Actionによる訴訟を起こしている
  • 複数のメディアによると、同様の制裁は同業他社にも課されており、QIWIの経営陣はこれらの制裁について、QIWI自身に特別に内部統制上の欠陥があったというよりも、ロシア中央銀行による全般的な電子決済、及びサイバー領域やクロスボーダー取引に対する規制に関する評価が厳格化されたためだと理解している
  • その後、一部の外国企業への送金又はその他の措置への一部緩和が実施された後、Q3においてこの制裁は終了した。

(賭博産業規制)

  • 2016年以降、QIWIはブックメーカーと共同でネット賭博が可能なInteractive Bets Accounting Center (TSUPIS)を運営し、ロシアにてネット賭博関連決済を許可されていた2社のうちの1社であった。
  • ところが、2020年12月に新たな法規制により政府機関としてのUnfied Gambling Regulatorが創設され、ロシアに全体の賭博に関する規制、監視を行うこととなった。この機関が運営するUnified Interactive Bets Accounting Center (ETSUP)は2021年9月よりTSUPISにとってかわられることとなった。
  • QIWI及び現状TSUPISを運営している同業他社はESTUPの管理者になるべく、入札を行っていたが、QIWIは管理者になれず、Q4よりTSUPISから得られていた収益がなくなることとなる。2021年Q3 YTDでは賭博事業はPS Payment Volumeの26%、PS Payment Net Revenueの38%を占めていた。TSUPISに関連した収益はQ3 YTDのPS Payment Net Revenueの23%を占めていた。また、TSUPIS事業とセットでスポーツベッティング会社に提供しているサービスの獲得にも影響が出る可能性が高い一方で、QIWIウォレットサービスから得られるベッティング収入の一部(ベッティングアカウントのトップアップや勝利配当の手数料など)は維持される見込みである。

 

ロシア中央銀行による制裁があった中で売却事業の影響を除いた実質純売上成長率は-2.1%と健闘

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Q3において実質純売上成長率は-2.1%となった。主にPayment Service 事業(PS)の粗利減少-4.1%をCorporate and Other事業+25.6%が一部相殺した。また、Consumer Financial Services (CFS)に含まれるSovestおよびRocketbankの非継続事業を含む総純売上成長率は-3.3%となった。

 

主要PS事業は規制の影響を受けて純売上高はYoYで-8.4%の減少も、金利の上昇等によるPSその他の事業が一部相殺し、PS事業全体では-4.1%となった

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Payment Serviceの2021 3Q Volumeは+12.6%増加している。これは主に送金額の増加+40.5%及びFinancial Service+10.1%増によるものである。

このうち、送金額の増加+40.5%は過去最高の水準となっており、(1)自営業者向け商品の開発やピアツーピア事業の拡大などにより、QIWIウォレットのBtoB, BtoC決済やカード決済(前年同期比110%増)の影響(ただし、このうち、ピアーツーピアー事業については、将来的には増加は続かない)及び(2)QIWIウォレットでの賭け金の 返金(前年同期比29%増)などの主要分野で取扱高が増加したことによる。

また、Financialr Serivceの増加+10.1%は銀行ローンやマイクロローンの返済が増加したことによるものである。

一方、電子商取引分野 取扱高は-11.3%となったが、これはロシア中央銀行が2020年12月に課した制裁(2021年5月に失効)による影響により、海外加盟店への支払額が減少したことによる。尚、この影響はTSUPISの稼働率向上や観光業の回復により一部相殺された。

通信分野の取扱高は、携帯電話会社7の取扱高が減少したことに加え、キオスクネットワークの縮小による影響を受け、前年同期比21.0%減となった

決済処理サービスを提供している公共料金やその他の政府機関の支払い、および慈善団体への支払などで構成されるその他のカテゴリーは、前年同期比28.3%減となった

 

一方で、取扱高から純売上高への利回り(Yield)は-0.23ポイント減少し、0.99%となった。これは主に、高利回りのクロスボーダー決済が一時的に制限されたことにより、PSの決済純収入利回りが23bps低下たこと、及び電子商取引比率のミックスが低下したことによるものである

 

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なお、PSその他の純売上は、+24.1%となった。これは非活動口座および未請求支払手数料において、非活動期間が6ヶ月から12ヶ月に延長されたことや、QIWIウォレットの口座数が減少したことにより、前年同期比で-12.8%となった一方、その他の収入が主に金利収入、代理店への当座貸越収入、広告宣伝等で、前年同期比+86.8%となった。主に、金利の上昇を背景とした金利収入の増加によるものである。

PS事業以外のその他の純売上は主にROWI事業が牽引し全体でQ3 YoYで+25.6%の伸びとなった

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2021年第3四半期にQIWIのファクタリング事業をROWIにリブランディングした。ROWIの純収益は、銀行保証やファクタリングのポートフォリオのさらなる拡大や新商品の発売(政府との契約締結のためのオンライン・ローンと、売上分析に基づいて実施する マーケットプレイスサプライヤーに対するローン)により、前年同期比61.8%増となった。

Adjusted EBITDAはQ3においてYoY -4.6%となり、純売上高に対するマージンも0.8pp減少

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Adjusted EBITDA及びマージンのYoYに対する減少は主にPayment Serviceの純売上高の減少によるもので、OPEXの減少はYoYで-5.0%と純売上高の減少-3.3%を下回っている。特にこの第3四半期においてOPEXの中のSG&AがYoYで38.7%増加しており、これは(i) 戦略検討の市場調査のためのアドバイザリー・サービス (ii) 付加価値税の控除対象とならない金融会社との取引が増加したことによる税金費用の増加 が要因である。

 

また、Adjusted Net Profitは-17.4%, マージンも7.2pp YoYで減少している。これは上記のAdjusted EBITDAの減少に加え、Tochkaからの持分法適用利益がなくなったことが主に影響している。尚、QIWIはAdjusted Net Profitの50%の配当性向で配当を実施するというGuidanceをだしており、これに伴い当第3四半期にも$0.3の配当決議が行われた。

Q3 YTDにおいて、Working Capital変動の影響(ロシア中央銀行による制裁、季節的変動及びRocket Bank等の事業停止の影響)により営業キャッシュフローはマイナスとなった。ただ、Working Capital の変動影響を除くとYoYではほぼ前年度と同水準で120 mUSDのプラス

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FY21 4Qからは賭博産業規制の影響を受けるがFY21の純売上高のGuidanceをYoY -10 to-15%とし、Q2に公表していたGuidanceから(-10% to -20%)から上方修正。また、これに伴いAdjusted Net Profitも-10%to-15%とQ2 Guidance(-15% to -30%)から上方修正された。

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  • FY21 10月から11月半ばまでは上記のGuidance通りに進捗している
  • Qiwi Walletsのアクティブユーザについては、ロシア中央銀行による制裁により、多くの取引ができなくなったことで減少した。また、それ以前にも、匿名口座の制限や信用確認手続きの強化を行っていたため、ユーザ数の減少につながった。ただ匿名口座はユーザ数が多かったものの、取引量でみれば全体の10%以下であった。一方、ユーザ数は減少したが、アクティブユーザの取引量は昨年度より92%増えており、一人当たりの取引量の増加が全体的な取引量の増加につながった
  • FY22のGuidanceはまだ公表できないものの賭博産業規制による落ち込みを他の事業でカバーする形となるであろう。具体的にはデジタルエンターテインメント、オンラインゲーム、オンラインカジノソーシャルネットワークに関するオンライン支払事業への集中や自営業者への便利なピア・ツー・ピアのソリューションの提供で、自営業者は小規模なビジネスを行い、顧客に商品やサービスを販売しており、これらが必要とされている
  • 現状のキャッシュを今後、どのように活用していくかはまだ議論中であるが、これらの投資によりFY23からは2桁の成長を見込んでいる
  • また、今後の規制による事業への影響については、一般的にリスクは低いとみつもってはいるが、ロシアにおいては規制の変更はつきものであるため、今後を予測することは極めて難しい。個人事業主間のB2BやB2C ビジネスについては規制が整備されていない部分でもあり、当局に着目される可能性もある

MQ Marqeta (マルケタ)Q3 2021 Earnings Call

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2021年10月10日にMQ Marqeta (マルケタ)のQ3決算発表とともに Earnings Callが行われた。会社の開示資料及びScriptからの状況まとめ。

 

大きなTAMと他社との提携により成長を見込む

  • Marquetaは全世界で$30兆ほどあるカード取引をマーケット対象としており、今はまだその表面を引っ搔いているにすぎない状況にある
  • 多くの新規顧客の獲得:Bill.comやFigureと、顧客の支払プロセスやデジタル口座についてMarqetaのソリューションを活用する提携を発表
  • Marquetaは新しいカテゴリーのカード利用の高まりに注目:Coinbase, Fold, ShakepayやBakktとの提携により顧客が暗号資産から実際通貨へと交換する際にMarqetaプラットフォームを用いたソリューションの活用等
  • Marquetaはプロダクトとパートナーのエコシステムを継続:M1 Financeのクレジットカードプログラム(会社の株式を保有しているとそのサービスが割引で受けられるサービス)のサポートを3Qからスタート、また、マスターカードの割賦支払のパートナーとして指名されBNPLプログラムをサポート
  • こららの顧客獲得は他の競合との比較の中で行われるが、Marqetaの11年にわたるビジネスの経験と実績によりModern Card IssuingのリーダーであるMarqetaは選択されている

TPVはYoY+60% BNPLやDigital Bankingが寄与

今回のQ3決算(会計期間)では、収益のKPIとなるMarqetaのプラットフォームを通じた取引量 TPV(Total Processing Volume)はYoYで+60%、QoQでは+4%となった。

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  • QoQではもの足りない伸びであるが、YoYでは確実に成長している。Q2 Earnings CallのTranscriptによると、この伸びは主にデジタルバンキング(Square, Lydia,, N26)及びBNPLの顧客(Affirm, Klarna, After Pay, Sezzle, Zip)からの売上増によるものである。特にBNPLはYoYで+300%以上伸びている(Q2ではYoYで+350%の伸び)。
  • Expense Management、暗号資産(Coinbase等)の顧客も伸びている。一方で、On-demand deliveryの顧客(Door Dash等)の売上は昨年度のCOVID環境下でピークアウトしており、減少している。
  • Marqetaにとっては、USでは政府による景気刺激策とCOVIDはプラスに作用しており、この影響は現在も続いている。
  • EuropeはMarqetaと同様のサービスしている競合はないことから、YoYで+340%の伸びとなり、顧客数も2倍になっている。それ以外のAustraliaやNew Zelandでも、事業を展開している

Revenue はTPVに比例して増加も未だに高いSquareへの依存率

売上高もYoY+56%となり、QoQでは+8%となった。

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尚、YoYの売上高増加額 $47Mのうち、$29M(62%)はSQ Squareからの売上増である。

 

売上には2つの種類があり、Platform service と other feesというものである。

このうちPlatform serviceは更にNet interchange feesとProcessing and other feesにわかれるが、Q3ではYoYでいずれも+50%以上の伸びている。

Net interchange feesはある特定のカード取引高に一定の%をかけた金額及び固定利用料が収益となるが、Tiered Pricingを採用しているため、顧客のカード取引高が多いほど、Revenue Share Paymentsとよばれる値引が入ることになり、この値引きとのNetで売上が計上されている。

また、Processing and other feesとはカードのATM利用高に応じて売上となるもの、および顧客のカード取引量が一定のThresholdに満たなかった場合に徴収される最低保証額である。

 

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上記はYoYの比較であるが、売上構成についてQoQで比較するためにQ2表を張り付けたものが下記である。

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上記より、Net interchange feesはQoQで+6%, Processing and other fees は+9%、Other serviceは+28%の伸びである。

Squareへの高い売上依存

SQ Squareの売上依存は、総売上のうちFY20 Q3 で72%, FY21 Q3では68%と減少傾向にあるものの依然として高い水準にある。なお、Q2の時も、売上依存比はそれぞれFY20Q2 72%でFY21 Q2 68%であったため、QoQで状況は変化していない。会社は新規顧客からの売上比率増に力を入れており、3Qでの既存上位5社以外からの売上はYoYで+226%となった。

粗利率はYoYで3ポイントQoQで7ポイント改善し、長期的な目標である40% -45%のレンジは継続

売上原価はCard Network fees, Issuing Bank fees とOthersからなっている。Card Network feesとIssuing Bank fees(主にSutton Bankへ)は、固定費や取引量の応じた手数料となっているが、売上と同様、売上原価も取引量が多ければおおいほど、Thresholdeを超えると取引量あたりのコストが少なくなるような取り決めとなっている。このため、四半期での原価率が年度の原価率と比較してぶれる場合がある。また、Otherの中には物理的なカードやパッケージコスト等が含まれる。

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Q3においては粗利率は45%に改善したが、ここに$4Mのカードネットワーク費のインセンティブの見直しによる影響が含まれている。このうち$2Mの改善については前四半期以前のものであり、この影響を除いた実質的な粗利率は43%となる。

4Qの売上Guidance (Midpoint)はBNPL, Digital Bankingの成長によりYoYで+55% ,QoQで+4%の成長を見込む

Q4はholiday seasonであることもあり、取引量が増えることになるため、売上は増加する。特にBNPLの領域に成長が見られることなるだろう。また、GuidanceにはHoliday Seasonに予想されるサプライチェーンのIssue (Logisticの停滞により商品が届かない等)の予想や新規採用によるコスト増の影響も加味されている。

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尚、2022年のGuidanceについて具体的な話は会社はしていない。ただし、2021年COVID及び景気刺激策があったが、2022年はこれがないので、2021年ほどの伸び率は2022年には期待できないとCFOのTripp FaixはCallで述べている。特に2022年のQ1については2021年のQ1に景気刺激策があったため、引く伸びになるであろう。